【アマプラ映画レヴュー】ローランド・エメリッヒ『ミッドウェイ』がイマイチな理由
インデペンデンス・デイの監督がおくるミッドウェイ海戦を描いた戦争映画
その名も『ミッドウェイ』の視聴レビューを辛口に書いていきます。どんな映画かというと、第二次世界大戦の日米開戦からミッドウェイ海戦を描いた戦争映画です。実話に基づいた日米双方の歴史と立場を絡めて描きます。もちろんアメリカ映画なので、主人公はアメリカ側の軍人ですが、日本人もきちんと俳優を揃えて撮影されています。
ミッドウェイ(字幕版)
いきなりですが、総合的な感想を述べます。大きなネタバレはございませんが、シーン等の説明は多少ございます。
『映画ミッドウェイの総合的な印象』
エメリッヒ監督といえば、まず挙がる作品は『インデペンデンス・デイ』ではないでしょうか。エアロスミスの音楽やアメリカ的ヒーローの描き方が王道で情感に溢れ、大ヒットを記録しました。さて、今回のミッドウェイですが、見どころが曖昧です。扱う題材が大きすぎた為か、主人公や主要キャラクターが誰なのか、ぱっと見で分かりづらい脚本です。登場人物が多いのでそれぞれをかなり特徴的に描かないと、観客が物語について行きづらいと思うのです。ところが、キャラクターごとの見せ方が甘く感情を入れる箱が見当たりません。アメリカ人から見ればどの役も超有名な歴史的人物なので、そこまで細かく描かなくとも分かるだろ、という感じなのかもしれませんが。
そして、CGが綺麗なんだけれどもちょっとさっぱりしていて薄っぺらく、臨場感に欠けます。上空での戦闘機の戦いは確かに迫力ある描き方をしていますが、陸に降りている飛行機や軍艦の甲板など何かが足りない。汚れがない、何度も戦に出ていった人間や機械とは思えない綺麗さなのです。役者の衣服とCGとの合成がいまいちなのかも知れません。それから、CGを利用した炎がチャチすぎます。爆発のシーンは良いのですが、足に引火した火が醒めるぐらい適当。いや、こんな嘘っぽい炎ならそこだけは本物の火を使えば良かったではないか、アルコールつけなさいよ、と思ってしまうぐらい残念でした。映画というよりゲームっぽいCG。いや、今ならゲームの方がクオリティが高そうです。
その上、脚本の抑揚が甘く、物語のピントをどこに合わせているのかはっきりしません。全体を程々に網羅しながらの展開で、誰に気持ちを寄せていいのか分からないまま話が進みます。もう少し登場人物を絞っても良かった。勇気あるパイロットか、暗号解読者、どちらかにもっと比重を傾けても良かったのではないか。二兎を追っていたら四兎、五兎も追っかけることになってしまったという感じ。
もし今作の代わりに観るならこの映画という作品もあげておきます。
こちらです↓
戦争を題材にした青春映画『メンフィス・ベル』
この映画は伝説の爆撃機に搭乗する若い米兵たちのお話。こちらも第二次世界大戦中の物語ですが、舞台はイギリスとドイツ。戦争と若者、勇気、犠牲など、戦いを美しく仕立てる要素を盛り込んで青春群像が描かれました。アメリカのTHE戦争青春映画なので本当の正義の話ではありませんが、アメリカ視点での感動がみっちりと詰まった作品です。テーマソングも印象的。こちら→
さて、本題の『ミッドウェイ』に戻ります。悪い点ばかりでもないので良かった点を次に書きます。
アマプラで観た映画『ミッドウェイ』の良かった点
その1:アメリカ映画ですが、日本サイドのこともまともに描こうという努力を感じます。起用した日本側の役者も一流どころを揃え、単に憎き敵役としてではなく同じ人間として他国の人間も扱っている。一流どころ(豊川悦司、浅野忠信など)を揃えたところにその気概も感じ、彼らの演技に見応えがあります。
その2:空の高い位置から直滑降のようなアングルで戦艦へ突撃していくパイロット目線の映像に迫力があります。飛び交う銃弾、高射砲、ぐんぐんと近付く空母の甲板、視界を遮る雲、黒煙の突破など見どころです。
その3:この映画自体が日米の両兵士に捧げられている点は流石、アメリカの制作で評価できると思います。
以上が、今回の作品『ミッドウェイ』です。2022年11月現在ですと、こちらAmazonプライムビデオで観られます。まだの方はご覧の上感想をコメントください。ではまた次のレヴューでお会いしましょう。リンクこちら→
ミッドウェイ(字幕版)
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