【映画レビュー】アマプラで観るアフロアメリカンが主人公の黒人映画三選
アフロアメリカンが主人公の映画を紹介します。
アマプラで視聴可能な黒人を主役やテーマに扱った作品を三つ
(*2023/07/31時点でのアマプラ登録作品です)
その1:社会派とエンタメの上質な融合『ラスト・ブラックマン・イン・サンフランシスコ』
ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ(字幕版)
この作品はサンダンス映画祭で監督賞を受賞した本格派の社会派映画です。ジェントリフィケーションという格差や地上げ、再開発に起因する社会問題を追い出された側の黒人目線で描いています。社会派というと難しくて見難い印象を受けるかもしれませんが、この作品に関しては心配無用です。サンダンス映画祭での受賞歴はなまじっかなものではありません。普通に楽しく見られます。楽しく見たのに考えさせられる、しっかりとした作りの映画です。
あらすじは地上げにより祖父の立てた家を失った黒人青年。その家を取り戻そうと奮闘するものの、サンフランシスコはハイテク産業で地代は黒人コミュニティが暮らせるようなレベルではなくなっています。そこで主人公の青年は友人と不法滞在をすることでその家に住もうとするのですが、白人主体の社会で彼らの居場所はありません。さぁ、どうする黒人青年よ。
心にじんわり来るシーンもあり、サンフランシスコの映像も見事に描き切っているので見応えがあります。美しい街並みだけでなく、社会問題を描きながらエンターテイメントとしても成功している優れた作品です。
もう一本観るなら、白人青年(マット・デイモン)が映画の脚本を書き、ハリウッドにデビューしていく姿を描いた白人一本道の青春映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』。続けて観るとアメリカの抱える貧困や脱出の夢、人種間の格差など対比が一段と理解でき良いかもしれません。
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その2:ハリウッドで日陰に追いやられた黒人をSFサスペンスの中で暗喩?『ノープ/NOPE』
NOPE/ノープ(字幕版)
なかなか謎の多いSF映画。これは実は映画史の話なんだとかつて映画評論家の町山智浩さんが語っていました。黒人が表舞台に立つことができず、いつも影に追いやられていたハリウッドの歴史。そう言ったものを内包させた深い映画なのだと。
ただし、普通に上っ面だけで観るとこの映画は未知の世界から来たエイリアン対アメリカの砂漠(ハリウッドのはずれ)で暮らす黒人たち。というSF映画です。UFO的なものが登場したり、襲われる人々がいたり。人間が解決のために奔走したりする一般的な映画にも見えます。しかし、知識が深い人が観るとこれはハリウッドの白人基本主義に対する黒人の歴史でもあり、大手の映画制作会社や視聴者を暗喩したものを汲み取ることができるそうです。そういう意味では何度も観られる映画と言えます。
その辺りは視聴後に町山さんのネタバレ解説動画を見ると良いでしょう>>https://youtu.be/i_3l-eG4MFs
もちろん映像も今っぽくて見応えあるので、深く考えなくともストーリーと共に単純に楽しめます。初回は何も考えずに観るのがお勧めです。
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その3:ジャームッシュの描く一風変わった黒人ヒットマン映画『ゴースト・ドッグ』
ゴースト・ドッグ(字幕版)
コーヒー&シガレッツやパターソンでも知られるジム・ジャームッシュ監督が描いた黒人侍アクションです。侍と言っても宮本武蔵の『葉隠』を愛読する黒人のヒットマンで、NYに住みながら殺し屋をやっている黒人の生活を描いた映画です。ただ、ジム・ジャームッシュが描く世界なので、普通のアクション映画にはない一捻り癖を効かせた作品に仕上がっています。
どちらかというと、レオン的なものに近いかもしれません。登場人物の人間性の描き方がジャームッシュらしく、個性ある人々です。黒人を取り巻く社会問題を絡めているかというと、あまりそういう観点から作った映画では無いように思います。いろんな人種が入り乱れるのはNYっぽいですが、主人公の役者さんが暗殺者を演じるには優しすぎる顔をしていて、観ていてもちょっと違和感があります。しかし、そこがまた癖っぽくていいです。一辺倒なマッチョではなく、ちょっとぽっちゃりして猫背気味な優しい瞳の黒人が暗殺者という皮肉?なのかなとも思ってしまうほどです。
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おまけ:黒人社会の白人への逆襲や、女性の男性への反撃を扱った作品が増えているように感じる昨今ですが、アマプラにももれなくそういった作風のものがあります。最後にそちらを紹介します。
昨今のドラマ・映画で描かれる黒人や女性の反撃をしる作品『キラー・ビー 逃避行』
太っちょ気味で根暗な黒人女子が主人公のドラマです。彼女は自分の推しアイドル歌手に熱を上げるタイプなんですが、彼女の周りの友人たちに理不尽なことをする輩がいます。それは大抵女性を見下す男です。普段は温厚で静かなタイプの主人公の彼女が、沸騰点を過ぎるとその男どもにブチギレます。ブチギレて半殺しどころではなく滅多刺しにしてこの世から消してしまう。静かにしかし恐ろしいほどの残虐さを持って反撃する黒人女性。
この作品はドラマですが、そういった残虐なまでの反撃を行う黒人女性を描くことで、本来の現実世界で彼女たちが受けているであろう虐待や差別を表していきます。
かなりひどいシーンも出てくるので、残酷なシーンが苦手な人にはお勧めできません。昨今の流れを知る一つとしてここに紹介し、今回のレビューは終了します。
では、また次回。
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