アマプラ4Kリマスター映画『自由を我等に』ルネ・クレール監督フランスほのぼのコメディ
センスが光る!チャップリンと相互に影響を授受した1931年の喜劇映画
昔の白黒映画をリマスターして美しい陰影を取り戻した映画をアマプラで楽しみましょう。今回はフランスの巨匠、ルネ・クレール監督の映画『自由を我等に』です。こちらはチャップリン映画を彷彿とさせる喜劇映画で、ほのぼのとした笑いにドタバタと人情劇を織り交ぜた内容です。というのも監督が自他ともに認めたチャップリンの影響を受けているそうで、随所に上質なコメディの要素と社会風刺、ほんのり寂しい人生が散りばめられています。未見の方はぜひご視聴をおすすめしたい映画です。
仏版喜劇映画『自由を我等に』あらすじ
物語は馬の木製人形を拵える場面から始まります。そこは囚人たちが作業する工場です。ここで出会った中の良い二人の囚人が脱走を試みます。しかし不運なことに一人は失敗、自分をおいて逃げろ、と声をかけ片方だけが壁外へ逃げることに成功します。そして時はたち、脱走に成功した方は事業に大成功し、街で大きなレコード工場を経営しています。そこへ、もう一人の囚人が再び脱走して辿り着きます。社長となっていた男は彼との仲を取り戻し、彼のために自分の工場で働く美女への求婚を手伝うことになるのですが、警察や密告者が出現、自分の過去もあらわになりそうで事態はドタバタと急転していきます。
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ここが見どころ
○役者がいい!
この映画、あらすじはどうということのない良くある話なのですが、まず役者がいいです。顔の小さな皺で演技するような実力のある役者さんが脱走兵を演じています。背の低い可愛らしい二人組のコンビがドタバタをしながら観客を笑わせつつ、ちょっと寂しげな表情にも感情移入させます。
○背景やロケ、セットの画面構成が美しくセンス良い。
1931年の映画とは思えないような、クールな印象を受ける建物の構成や画面の切り取り方に監督のセンスを感じます。無駄を省いたすっきりとした背景。建築物やセットの陰影が素晴らしい角度で画面を切り取ります。内装のセンスも抜群で、本当に1930年代?と疑ってしまうような洗練された照明や椅子、什器にも見どころがあります。こういう部分でも楽しめる映画というのはかなり質が高いと思います。さすがフランス映画。
○チャップリンイズムと独自の笑いをうまくミックス
監督自身がチャップリンに影響を受けているという点からも分かるように、所々にチャップリンオマージュ的な笑いのシーンがあります。工場でのドタバタ喜劇はこの時代のおてのものでもありますが、むしろチャップリン作品に影響を与えたのではないかという話もあるそうです。*参考wikipedia
このように、現代から見ればチャップリン的な面白さはもちろん多分に感じられるのですが、ルネ・クレール監督はその部分だけに執着しません。割とすっきりと場面をポンポン進めていき、暑苦しい笑いにはしない塩梅のかっこよさを持っています。
そこへ前述の画面構成の美しさ、センスの良さなどが加わるので喜劇だけの映画には留まらず、現代でも充二分に楽しめる良質の映像作品となっています。
○すっきりした構成に見え隠れする社会風刺は監督の手腕
時代背景として工場での生産など、仕事がオートメーション化していくなかで、最初のカットは手作りの馬の人形から始まります。美しい馬が並んでいるのですが、カメラがターンするとそれは囚人たちがひとつづつ小槌で手作りしている。捕らえられ労働させられているシーンがスタートです。そして物語が進むにつれて主人公たちが流れ作業での労働で金を得る時代になります。さらに機械化が進み、自動で製品が作られていく時代の中で、風刺としてもう一度友情やお金に勝る本当の自由を見つめ直させる。それを巧みに試みた監督の手腕は見事だと思います。それも暑苦しさなしに、すっきりとした構成で語られ、笑いを削ぐこともありません。見事です。
まとめ
4Kでリマスターされたことで、画面の美しさや背景、内装、建物の素晴らしさなど細部までも楽しめるリッチな映画になっています。気軽に見られる反面、戦争を控えた緊張した時代であったはずなのに、コメディとしての社会風刺を忘れることなく、労働と自由を提示してみせた快作。お笑いに終始することなく、ほのぼのとさせる友情もきちんと描いて好印象。チャップリンへのオマージュを含みしっかりとラストシーンまで楽しめます。
万人におすすめできる一本です。
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この作品によりチャップリンが影響を受けたと言われている工場のシーンがある作品>>『モダン・タイムス(字幕版)』
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