【映画レビュー】強い女と間抜けな男が裏テーマ?マーゴット・ロビー出演プロデュース『ドリームランド』
強い女と間抜けな男たちがテーマ?な現代アメリカ映画
バービーの主演で賑わせたマーゴット・ロビーが自身の設立した制作会社で作った『ドリームランド』のレビューです。
いきなりですが、普通に見るといまいちでした!
原因は深みのなさと作りの軽薄さです。ですが、裏テーマというかこの映画の主題が「強い女と間抜けな男たち」だとして見ると色々と気がつかされる点のある映画です。ではあらすじ含めみていきます。*多少のネタバレありますので未視聴の方はお気をつけください。
マーゴット・ロビー『ドリームランド』あらすじ
干ばつと砂嵐で作物の育たないどどど田舎に住む青年をフィン・コールが演じます。彼が銀行強盗と殺人を犯して指名手配中の年上美女マーゴット・ロビーと出会います。自身の幼さと彼女の妖艶な魅力のためにイチコロで心を許し、青年は彼女を匿い、逃亡に力を貸すはめになります。
青年と母親、妹と一緒に暮らす義父は警官です。義父はこのまちに銀行強盗が隠れていることが濃厚になるにつれ、義理の息子と彼女を追い詰め始めます。そんな中、作物をダメにする猛然とした砂嵐が街を襲い始め・・
といった内容です。あらすじ的には面白そうなのに、表面的にはそこまで関心しない出来なのはちょっと失敗もあると思います。その辺りも見ていきます。
裏テーマ?「強い女と間抜けな男たち」を表象するシーン
まず、主人公の青年は田舎で女を手に入れることもできず、友達と追っかけっこをしたり自転車で出かけるのが精一杯のいまいちな美男子です。しかし彼はすでに25歳なんです。そんな年齢になっても、仕事もなく車もなく、女もいない(童貞)なんです。アメリカ社会からしたら貧弱極まりない立場です。
そして、殺人強盗犯であるマーゴット・ロビーを追いかける警官も間抜けな男です。指名手配犯がいる場所まで近付き、証拠を集めながらも大トンマで間抜けをやらかし続けます。
一方で「強い女」を表すシーンも随所にあります。
マーゴットは強盗に入った時に被弾し太ももに弾丸が埋まったままですが、それを摘出するのに主人公の青年を手伝わせます。しかし、青年の方が震えて怯え、弱さを見せる描き方。それに対し、マーゴット演じる強盗犯は歯を食いしばり、弱音を吐かずに強さを見せます。さらに、一般的にこれまでの映画であれば男が運転したであろう逃避行の大事な場面でも運転は彼女がしていたりします。また銀行強盗中の立場にもそういうシーンがあります。マーゴットの役柄にひ弱な描き方はされません。
ここがちょっと薄いよ『ドリームランド』
話としてはエンタメにありがちな話題。面白くするのも楽そうな話です。最初は脚本のディティールが弱くて、せっかくのキャラクターが間抜けに映っていると感じましたが、これはわざとだったのです。義父の警官は強面で恐ろしいんだけど、操作中に犯人の車の鍵を抜いて逃走を防ぐとかっていう気の利いた行動は思いつきもしません。残置物にピンときたりする臭覚はあるようなのに、息子が家の裏で事件に関する重要な出来事である焚き火をしても気がつかないとか。
つまり「間抜けな男警官」としてこき下ろしているのです。
とはいえ、脚本が完璧かというと全然そんなことはありません。どちらかというと甘いと思います。マーゴット演じる強盗犯も、犯人にしてはイマイチ緊迫感にかけた行動をします。ど田舎で逃亡中の手配犯なのに、先を急ぐ雰囲気がなくのんびりしています。
開拓地としてのアメリカ要素だけはがっちり詰め込まれ、大切な局面では今一歩感もある
乾いた荒野と指名手配の銀行強盗という典型的でありきたりなアメリカが大好きな時代設定。そこへ子供や家族の物語を絡め、殺人を犯しながらもある種ヒロイックな存在の女強盗犯が逃げていく展開。ただちょっとどの点も描きの密度が薄いかな〜。嵐のCGはよくできているけど、強盗や逃走との絡みがいまいち惜しい。
この映画の面白かった点と不思議な部分
主人公の青年が二十五歳なんだけど、童貞なんですよ。田舎すぎて仕事もなければ若い女の子もいないし、都会的な娯楽も、車もない。だからアメリカにしては随分年齢が高いのに二十五歳でまだ自転車に乗って遊んでる。そこが面白い。悲しい男どもよ。
仕事もないので堂々と振る舞えず、夜に子供のように家の窓から抜け出して遊びに行く。この情けなさはよく表せていたと思います。一方で都会的な美しさを持った強盗犯であるマーゴット・ロビーは男まさりで、強さの象徴として振る舞います。ビンタも強い。
視聴後総評と結論
なんだか脚本が弱いな〜と思いながらも、「強い女がテーマなのか?」と気が付くとそれなりに楽しめる映画ではあります。嵐の映像もよくできているし画面作り色作りもまぁまぁ楽しめます。ただちょっと作品としては色褪せるのが早そうな気がしますが。
2023年公開の新作映画『バービー』等含め女性の強さを見せているマーゴット・ロビー。彼女が制作側として参加している作品だけあり、彼女の立ち位置や思考がよくわかる作品となっています。
『バービー』も今作『ドリームランド』も2024年1月現在アマゾンプライムで視聴可能です。こちらからどうぞ→マーゴット・ロビー『ドリームランド』and More
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