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【映画レビュー】『ザリガニの鳴くところ』は生命の不条理を描いた?ネタバレと不思議と疑問全部の感想です!


ザリガニの鳴くところ

デイジー・エドーガー=ジョーンズ主演のなんだか全体的におかしな映画『ザリガニの鳴くところ』を分解していきます!

オリビア・ニューマンが監督したこの映画は湿地のある街が舞台のサスペンス恋愛映画です。
あらすじとしては親の教育なく人里離れた湿地帯の一角で育った少女が、女として人間として生きる姿をサスペンスを交えて描いた劇映画です。舞台はノースカロライナ州の町ということですが、ボートが生活の必需品としてみんな持ってるような場所のようでした。その田舎町で殺人事件がおこり、この人里離れた場所で育った女性が犯人ではないかという疑いがもたれ、裁判へと発展します。裁判の進展にあわせながら彼女の回想が映像として映し出されていきます。なのですが、一筋縄にはいかない変な魅力があります。

*ではここから盛大にネタバレしながらこの不思議な映画を分解していきまうす。ネタバレに泣かないでくださいね。

 

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いきなりですが、ここが変だよ映画『ザリガニの鳴くところ』

 

幼子に薄情すぎだろ兄弟姉妹たち!!

まずね、設定がとんでもない環境なんです。四人兄弟の末っ子として登場する主人公。最初のシーンではまだ幼稚園生程度の幼さです。なのにですね、彼女を置いて、暴力夫から母親は一人で逃げ出し消えてしまいます。立て続けに兄弟も全員父親の暴力に愛想をつかし、みーんな家から出ていきます。しかも束の間の家でとかではなくて捨ててです。全部を捨てて出て行って消えてしまいます。それで、だれも幼稚園生ていどの可愛らしい彼女を連れて行かないんです!薄情すぎだろ!!
あまりにみんなが薄情すぎるので、この子だけ親が違うのかもとか考えました。お父さん違いとか・・

でね、もしかしたら本当にそうなのかもと見終わってから思ったんです。このさきで説明します。いきなり一番大事な結末を書きますのでまだ見ていない人は読まないでください!

 

『ザリガニの鳴くところ』結末の大事な部分を以下に書いてしまうので注意!!

 

いいですか、結果として主人公は殺人を犯していたんです。そうですよね。男を殺していました。しかもお腹には彼の赤ちゃんがいるような雰囲気さえ一瞬映されました。裁判が結審したあとお腹にふれるんですよ、思わせぶりに。だから自分を犯した憎っくき男、その殺した男との子供を身籠もっていると察することができるシーンです。
で、作中にはカマキリの絵が所々に出てきたりもします。受精後に雄を食べてしまうあのカマキリの行動をとりあげるわけです。

ですが、裁判後の幸せな晩年の時間を描く部分ではどうやら子供のことは登場しません。(原作があるらしいのでそちらはどうだったのだろうか。気になる方は最下部に原作書籍のリンクも貼ってあります)
まったくの邪推ですが、主人公はどこかで子供を産んでいて、母親がそうしたように彼女自信もその子を手放したのではないかとさえ考えます。だれか面倒見のよい、人の良さそうな子供のいない夫婦の門前にそっと置いてくるとか。そういえば心根の良いアフリカ系の夫婦が登場したなぁとか、いろいろな妄想が頭をよぎります。

 

さて、ほかにもおかしいところがいくつもあります。

庭や周辺の空き地が綺麗すぎるだろ!

主人公のカイアはときおり男と人目のつかない自然の中へデートに行くのですが、そこがめちゃくちゃ手入れされた、どう考えても人の庭だろ〜っていう綺麗さなんですよ。芝生みたいに整った場所があるし、ガーデニングしたとした思えない植木がバランス良く並んでいる・・・そんな大自然ってあるんですか?

ちょっと人里離れた場所にしては都合が良すぎる変な自然の雰囲気です。厳しさが全くないというか・・・

そして彼女カイアは子供の頃から教育を受けずにほとんど一人で大人になった女性ですが、なんだかんだ身綺麗にしているし、現金収入もムール貝を取って商店に売るくらいしかないのに、少女時代から家が全く古びずにちゃんとしてる。いやいや、ムール貝売るだけでこんな家に住めるなら相当幸せな環境ですよ。モーターボートもあって庭も綺麗で。
ちょっと偏屈人間が住んでいると噂されるには場所が良すぎやしませんか。そして生殖だけはだれにも教わらずにしっかり動物的にこなします。これがザリガニや自然の生命の成り行きを表すのだろうか?

 

『ザリガニの鳴くところ』ここがおかしい殺人の腕前とアリバイ作り

こまかいところに気づいていそうで、大事なところには全く気がつかない陪審員や検察、弁護士の方々。
彼女が殺人を犯すときに、アリバイとして別の街へバスに乗っていったという行動と証言があります。それを街の人も目撃している。しかし、被害者側の弁護人は「夜中の便で帰ってきて、早朝に誰にもみられずに別の街のホテルへ戻ることが可能だ」ということを言います。
しかし、判事たちは、「可能性があるという時刻表的、乗り換えのやりくりであり、想像にすぎない」として見逃します。

ところがです、ところがですよみなさん。みんなが寝静まったそんな時間に主人公のカイアはどうやって殺すために男を呼び出せたんでしょうか?電話もなく、静かな街であの声のでかい男を誰にも見られずに?

自分を殴るか、はちゃめちゃにしようとしている暴力男をどのように手懐け、辺鄙な場所にある物見の塔へ誘い上げ、落とすことができた?
このあたりのことは脚本では細かく描かれません。小説の方でならもしかしたら納得のいく描写があったのかもしれません。映画だけではちょっと物足りない裁判と犯行の詳細でした。

 

ラストに待っていたこの映画『ザリガニの鳴くところ』最大の謎とおそろしさ

いろいろ大変な生活。とはいえ、まぁ無事に暴力男の殺害に成功し、元彼とヨリを戻してその後は幸せに暮らしました。で、終わるのかと思いきや、彼女はその元彼だった心の優しい旦那さんに最後の最後で自分の殺人をこっそり打ち明けるではないですか!なんという仕打ち!!

あの長年隠され、騙されていたことを知ったときの旦那さんの驚愕の顔よ。彼女一人の秘密として墓場に持っていくことも十分可能だったのに、周到に準備してそれを知らせる・・・怖すぎワロタです!

自然は何も考えずありのままがある、みたいな雰囲気を最後に持ってきて決め台詞「ザリガニの鳴く暗いところに帰っていく」みたいな最終の表現。

いや、すごい持っていき方だなと思いました。ターシャデューダのように生きてる風のお婆さんの姿からは想像もできない野生の呼び声。ある意味自分にめちゃくちゃ素直な彼女。感服しました。

 

そこでね、やはり最初にもどるんです「もしかして、これって女性側の否応なく繰り返す運命みたいのを描いているのかしら?」「男をつかって子孫をえたこと以外は、とくにもうどうでもいいです」っていう自然の摂理を?

映画の出だしで、カイアのお父さんはどうも心や体に傷をおったような雰囲気でした。戦争帰りで心身ともに病んでしまい人里離れたまま生活している。それにもしかしたら、お父さんが戦争に行っている間に妻が別の男と出来てしまって生まれた子供がカイアなのではないか?

そんな母をなぞるように、彼女も不在だった元彼の空虚を別の男でうめたのではないか、そして身籠ったのではないか?

ザリガニの鳴くところとは、生まれたら放置され自分で強く生きていくしかない生命の過酷さと繰り返し、不条理のことではないのか、生命の叫びではないか。

そんな妄想が捗る映画です。原作がちょっと読みたくなる映画です。

アマゾンプライムでは丁度今日プライム会員向けの配信が終わってしまうのですが、急げば間に合うかも?
あとは原作を先に読んでみるのもいいかもしれませんね。視聴後に不思議な余韻のある映画です。
以下にそれぞれリンク貼っておきます↓

 

Amazonプライム『ザリガニの鳴くところ』概要
Amazon→ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)

 

ではまた〜

Category : 映画&ブックレビュー

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