【映画レビュー】仏版ニュー・シネマ・パラダイス?『幸せはシャンソニア劇場から』
幸せはシャンソニア劇場から (字幕版)
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1930年代のパリに花を添えるシャンソニエ 歌ありコメディありの小劇場の浮沈を描いた人間ドラマ
あらすじ
1930年代の激動の時代を生きる芸人や劇場スタッフたち。しかし、小劇場は売り上げも厳しく地上げ屋に買収されてしまう。そんな中シャンソニア(歌やお笑いの演芸場)が大好きなスタッフや出演者たちは劇場を立て直し、買い戻そうと奔走する。パリでは戦争の足音と共産党へのバッシングが高まっている。
しかし、ウケない芸を続けるしか脳のないコメディエンヌや人気歌手を雇う金もない再建メンバーたちは仕事もなく哀れな日々を過ごしている。ところがある日、歌のうまい美しく若い女性が現れる。彼女の美貌と才能に地上げ主である大家や、再建を願う古参メンバーたちは惚れ込む。彼女を中心として劇場再開の目処が立つのだが、それは別の波乱を生む幕開けでもあった。果たして劇場愛に生きる下町の人々は彼らの居場所を持ち直すことができるのだろうか。
視聴後の雑感
当たり障りがないというか、全体的にそこそこ面白いお話。日本の寅さんを薄くして、三谷幸喜的なコメディ演劇を少し足したような雰囲気。ちょっと歌がしつこかったり、展開がありきたりだったりします。つまらなくはないのだけど、今ひとつパッとしない。だけど最後まで見ちゃう。フランス版ニューシネマパラダイスというにはちょっと物足りない感あり。
もう少し話の展開にメリハリをつけたり、子供を出すなら彼をもっと主軸にして話を展開しても良かった気がします。主体として誰をメインにしたいのか、いまいちはっきりしない作り。(主人公はもちろんいます。小劇場の支配人。ですが、ちょっと薄いんですよね〜)アコーディオン弾きの少年はすごくいい味を出していたので彼目線の世界観でも面白かったかもしれません。主人公のおじちゃんは、人がよく見た目が面白くて可愛らしいけれど、いまいちキャラにグッとこないんだよなぁ。
「ここは良かったよな」な点
舞台設定は良かったです。戦争の迫る感じとシャンソニエという下町の劇場小屋が雰囲気を盛り立てます。前半は特に脚本も良くて、引き込まれます。セットの内装などもパリらしくて目を楽しませてくれます。
俳優たちの演じるつまらない芸風もよくできてました。本当につまらない芸しかできないコメディ役者を上手に演じている。
シャンソンが好きな人は劇伴の曲を楽しめるかもしれません。随所に下町的シャンソンが歌われます。
『幸せはシャンソニア劇場から』の総合的な感想
気軽なテレビドラマとして見るならありかも。映画としてだとちょっとレベルが下がってしまうきらいがあります。急に暇になってしまった日に重くない話を見たいというシチュエーションであれば楽しめると思います。前半は良かっただけに後半の少し間伸びした脚本がもう一声欲しかった。展開にもう少し劇的な抑揚があると前のめりになって楽しめるかもしれません。
要所要所にのんびりしたシャンソンが流れるので、そういうパリ下町の生活感が好きな人はそこそこ楽しめると思います。ガチではないですけどね。
パリについてもう一本観るならこれ、もっと面白い作品はこれ
この作品じゃぬる過ぎるという方には現在のパリのストリップ劇場を内側からルポ的に撮影したドキュメント『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち (字幕版)』をお勧めします。決してゲラゲラ笑うようなものでもでも、エロチックなものでもありませんが、実際のパリの劇場運営がどんなふうに行われているか垣間見ることができます。監督はじっくりと公平な目線で見続ける撮影方法に定評のあるフレデリック・ワイズマン。
同じ劇団員を主人公に描いた作品であれば、圧倒的に面白いのはこちらの記事で紹介した『生きるべきか死ぬべきか』もうレベルが違うぐらいの完成度です。1942年制作の白黒映画ですが、対ドイツのレジスタンスと劇場、シェークスピアを絡めた上質な一本。笑いとハラハラするサスペンスが最高のバランスで描かれます。個性的な俳優たちもきちんとキャラ立ちしていて深い。かなりおすすめ。大きなネタバレもしませんので、ぜひレビューをご覧ください。
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