初心者バズメンくんのカメラ実験と映画日記です。

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【映画感想】大ヒット『国宝』のつまらなさを語るのはタブーなのか?

『国宝』をみてきたので素直な感想を書きます。

 

国宝

 

はっきりいうと、「普通」というのが第一の感想です。
この映画がなぜ大ヒットロングランになるのかは、さっぱり分かりませんが、いいところはもちろんあります。
良いところは、演者が頑張った、役者に上手い人がいた、飽きさせずに三時間見せる技術があった。
そういうところは普通によかったです。

しかし、私がいいたいのは、この普通がなぜ大ヒット、絶賛の嵐なのかそこを疑いたい。

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1:いつまでこういう映画を撮って満足しているのか?

話の流れもうまくつくっているし、役者もうまい、題材も伝統的で日本の美もある。でも、映画としての「視点」に新しいものや、2025年に撮るということの意義を感じるほどの挑戦は感じませんでした。
飽きずに三時間見られる脚本、映像、演技は立派ではあるけれど、その先になにかあったかというと私は感じなかった。
傷ついて、屋上で踊るという設定も普通だし、化粧を落とさずにいることや、着物を大切にしないでそこまですることに、魂が現れているかというと、それもなかった。

2:すべてを見せて、語ってみせるつまらなさ

作りが全部見せなんですよね。感情の細かな部分を演技や映像の変化、音響の技術でみせるということがほとんど無いように感じました。
すべてセリフで語り、盛り上がっていることを爆音の音楽で表現する姿勢に「幼稚さ」をみてしまいました。

なぜ、あんなに仰々しい音楽で感情を表そうとするのか、洋楽的なミュージックで感情をあらわす。配信になったら音消しで見てみてほしい。どれだけ魅力がうしなわれるか。
せっかく日本の伝統芸能を扱ったのなら、動きだけでかなり語れるものがあったはずだし、鼓の音のみで真理を表してもよかったし、無言の中に雄弁にかたるシーンをつくってもよかったのではないか、「説明が過ぎる」と思いました。

3:映像はもっと期待していた

映像が残念でした。ポスターのビジュアルがかっこいいので、もう少し映像が今っぽいスタイルで伝統芸能を表したものがみれるのではないかと思ったのですが、残念。純粋に撮影していて綺麗なシーンはもちろんありましたが、ポスターのビジュアルを上回る映像美があったかというと疑わしい。
CGも変な雑な場面がありましたね。
伝統芸能の動きをそのまま見せることで心を震わせる映像美を伝える、そこまでにはなっていませんでした。おしい。

だから、2025年にこれなら、溝口健二の映画の方が全然うつくしいだろう、ということなんですよ。
溝口健二『雨月物語』アマプラでみられます↓

ということで、『国宝』何をやっているのよ、「魂が震える」っていうけど、この映像のどこに震えるのよ、なに大ヒットロングランしているのよ。「全部めっちゃ普通じゃん!」

4:こだわりがよくわからん

ストーリーの陳腐さもそうだし、感情の表現もそうなんだけど、さらに突っ込んでもう一個シーンをあげます。
これが意図したものなのか原作を読んでいないのでわからないのですが、二人が初めてそろって、赤絨毯(なんていうの?)の上で客席に挨拶する場面。そこで、面前に扇子を置くのだけど、そこにさ白いゴミが一つ落ちてるんだよね、あれはなんだろう。たんなる撮影のミスなのか、気が付かなかったのか、そうだとしたらとんでもない価値観だと思った。ばっちりゴミうつっちゃってるじゃん。映像がチープになっちゃうじゃん。

いやいや、さすがに松竹の肝入りの映画なんですからそんなことはないでしょう。多分原作に登場するゴミなんだろうと私はみました。いつかそれが映画のスパイスになるかなと期待もしてましたが、特にそことリンクするようなシーンは気が付かなかった。
それに、最後の方で満員の観客がスタンディングオベーションなみに拍手をするのだけど、なんとも奇妙なんだよなぁ、みんな揃いすぎだし嘘っぽかった。
この二点は共通して映画の質をちょっと下げてしまったような気がします。

結論:いたって普通

「普通」の映画だった。そこにつきます。
特別、これまでの映画体験を一新するような驚きや感動もなく、普通にみれる国産映画。俳優陣は頑張った。田中泯の動きは確かに異様に目を奪われた。ストーリーも平凡だった。人間たちの愛憎や友情、しがらみ、伝統の難しさも普通だった。描き方も普通だった。

なので、普通なものが好きな人にはささるんだろうと思います。これといって深みのない、ごく普通の映画です。
役者はすばらしかったよ、子役も良かったし、大人になっった二人が、あの伝統芸能の演技を習得するのめちゃくちゃ大変だったろう。だからそういうドキュメンタリーだったら私は絶賛したかもしれない。けれど、これは娯楽映画だから、演技を頑張ったかどうかで最終的な評価になるものではない。

ということで、『国宝』はとくに感動もしないしもう一度みたいとも思わない映画でした。俳優のなかに自分の好きな人がいるなら、ゆっくり眺められるという点で、きっと何度も楽しめる人もいるとは思いますね。あと原作を読んでいるひとなら楽しみがあるのかもしれません。

ではでは。

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