【映画レビュー】『哀れなるものたち』個性的衣装と豪華なセット、音楽で魅せるSFファンタジー
18禁!エマ・ストーンが身体を張ったアカデミー賞受賞作『哀れなるものたち』の面白いところとイマイチなところ
奇想天外なファッションや装飾品、VFXとセット美術を駆使したファンタジーが売りの18禁SF女性冒険ファンタジー作品『哀れなるものたち』英題は『Poor Things』
あらすじは、脳移植を受けて記憶のないまま蘇った女性が様々な土地を訪れ、多種多様な人々と接触することで徐々に人間性を取り戻していくお話です。(*今回はネタバレは少なめです)
『哀れなるものたち』の見どころと面白い点
その1:衣装が面白いです。(衣装デザインはホーリー・ワディントンでアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞)
独特なドレスがたっくさん登場します。肩の膨れた様々な洋服の見事なこと。色も様々、生地も色々でみているだけでかなり楽しめる衣装のオンパレード。服飾に興味のある方は出だしからぐっと引き込まれること間違いなし。
その2:音楽が秀逸(作曲はジャースキン・フェンドリクス)
耳に残る音楽がこれまた独特な印象を与えてくれます。半音やちょっとずれたような音、間違って鳴ってしまった様な音さえも取り入れた作曲されたファンタスティックな曲が散りばめられています。作曲はJerskin Fendrix。調弦を間違えたような楽器や歪んだ様な音も楽曲に取り入れた音楽が好きな方は、サウンドトラックのアルバムも是非チェック。音楽作品としても独立して実に良い出来なので、映画をみなくてもいいぐらいの完成度です。是非聴いてみてください。。音好きな方はアナログ版もあるようです。
バイナル版サントラこちらから→
Poor Things (Original Soundtrack) [Analog]
その3:セットの内装が豪華(セット装飾 ジュジャ・ミハレク)
この映画、実は歩いて回るのに三十分以上もかかるような大きなセットを組んで撮影されたそうです。装飾を担当したのはハンガリー、ブダペスト生まれのジュジャ・ミハレク( Mihalek Zsuzsa)さんで、アトミック・ブロンドとかヘルボーイでも活躍した装飾デザイナーさんのようです。
細かなディティールや背景などはもちろんVFX/CGも使い、現代ならではのAIも多分使って画面合成を行なっていると思います。しかし、様々なモチーフが実際にセットにも作られたようで、シーンごとに変わる内装や外装が次々と変化に富み、みていて楽しい。
『哀れなるものたち』のここがイマイチな点
その1:ちょっと同じテンションが続きすぎる
とくに後半なのですが、前半ほどのときめきが減ってしまいます。場面は変わっても同じ内容というか、持っている雰囲気が似通ったシーンが続き、目が慣れてしまったのかもしれません。中弛みというやつですかね。もうちょっと前半の飛び抜けたワクワク感が後半にも欲しかったです。
その2:VFX/CG AI感が結構濃いめにある
撮影はセットで行ったということですが、画面の一部はAIの画像生成ではないかなと思われるコッテリめのグラフィックが要所要所に登場します。そのあたりはファンタジー作品なので仕方ない部分もありますが、好みは分かれそうです。なんとなく偽物くささ、CGの無味無臭な感じを受ける場面もあります。
その3:けっこうグロいシーンがある
題材はフランケンシュタインということもあって、人体を改造したりする場面があるのですがその描写がけっこうグロいです。サスペンスでもないわけだし、もう少し観客の想像力に頼った作りにしても良かったのにと思います。
そして、エマ・ワトソンがヌードになりまくり、心ここに在らずでみせるSEXシーンの多さ。これにも辟易する人が結構いそうです。
その他映画の見どころ
エマ・ワトソンの表情の変化がいいですね。人造人間として始まるのですが、様々な土地を訪れ、多種多様な人々に出会うことでエマの表情が刻々と人間味を帯びていきます。最初と最後の顔の違いはかなりあります。上手い見せ方ですね。
エマワトソン演じる主人公ベラ、彼女の素直で奇想天外な行動が前半のみどころです。あまりにもおかしな行動をとるので、シニカルなのですが、笑わされてしまいます。その点後半はまともになって面白味が欠けてくるのはちょっと残念ですが、致し方ないといった展開でしょうか。
『哀れなるものたち』総合的にどうだったか・・
前半特に面白いです。目新しい衣装や色味、内外装、ヘンテコな音楽などどれも個性的で一気に惹きつけられる面白さがあります。ですが、後半は目が慣れたこともあるし、物語の展開的に普通の人間になっていくので「映画自体も普通になってしまいました」
そこが2時間ちょっとの映画としては若干物足りない部分でしょうか。
また、欧米では「フェミニスト映画だ」とか「全然そうじゃない」といった論争が起こったようですが、はっきりいうとそんなに論じるほど内容の濃いような映画とは思えませんでした。そこまで社会的な問題や現代社会を痛烈に風刺した作風でもないと思います。どちらかといえば世界感というか、見た目重視な作りを意識したのではないかな?なので、堅苦しさはありませんし、洒落ています。一方でそこまでの深さがあるような映画でもありません。まさにThe Poor Thing!!?(かわいそうに!?)
とはいえ原作とはラストが異なるようなので、本を読むとちょっと感想がかわるかもですね→『哀れなるものたち (ハヤカワepi文庫)』
個人的にはもう少し、風刺や社会性を取り入れた方が奥行きがでたのでは?と思いましたが、それでもはっきりした絵作りや音楽の見事さ、装飾とファッションの出来栄えなどに見応えが十分ある映画だとは思いました。
アマゾンプライム等で配信も開始さされていますので気になった方は是非ご視聴ください→『Amazon Prime 哀れなるものたち』
ではまた!
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