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【映画レビュー】シャラメ版『DUNE/砂の惑星』は宮﨑駿ジブリの影響も?


DUNE/デューン 砂の惑星(字幕版)

 

あのデビッド・リンチさえ失敗したとされる問題作『DUNE/砂の惑星』シャラメとゼンデーヤで復活か

ティモシー・シャラメとゼンデーヤのコンビで話題になった新装版デューン。ついにアマゾンプライムでも公開されました。既にパート2が完成しているという今回の映画化は成功だったのか、リンチ版にも触れつつ見ていきたいと思います。*本サイトはアフィリエイトプログラムサービスによる適正な収益を得ています。

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今回のシャラメ版『DUNE』の「すごい」ところと「ちょっとあれ」なところ

出演者が豪華絢爛過ぎ

今回のドゥニ・ヴィルヌーブ監督は、主演の王子役に『君の名前で僕を呼んで』大フィーバーした若手俳優、ティモシー・シャラメを起用しました。そして、彼のお相手役にはなんとスパイダーマンでもヒロイン役のゼンデーヤ。これだけでも観たくなること間違いなしの配役。しかもそこに重要な母親役でレヴェッカ・ファーガソン(ミッション:インポッシブル/ ローグネイション 、グレイテスト・ショーマン)、家来としてジェイソン・モモアなど豪華すぎる出演者です。

しかし、キャラクターの癖の強さでいえば旧作、リンチ版の比ではないです。リンチ版のハルコネン男爵には到底敵いません。リンチ版の気持ち悪い男爵は一回見たら忘れられないキャラクターでした。他にもリンチ版は世界観でいえば今回の新作版よりも独自のものを持っています。その面でデヴィッド・リンチ版は失敗ではないと思います。唯一無二の世界を作り上げたのです。

主人公の違い

主人公についても新旧双方で描き方が結構異なっています。リンチ版の方がより逞しい剣闘士的なヒーロー像。一方でシャラメ版はシャラメのナイーブさを前面に出し、得体の知れない感情に苦悩する未熟な王子像を見事に作っています。これは好みの問題もありますが、原作を読んだ方はどちらが適切なのか教示していただければと思います。(未読なもので・・)

個人的にはレベッカ・ファーガソンがとてもいい味を出しています。母として女としての美しさと苦しさを両立している表現はさすがで、これは今作の柱でもあるといえます。

CGによる世界観のクオリティーが半端ない

今作のCGについては文句のつけようがないと思います。砂や青い目、暗黒の世界や建物などハリウッド最高水準のCG映像が見られます。一方で暗闇を多用しすぎな感じも受けます。暗さで誤魔化しているような見せ方が各所に採用されています。そのおかげで世界観を崩さずに済んでいるともいえますが、ちょっと物足りない?
そして、飛行船や建物等も独創性があるかというとそこまでのデザインには感じません。なんか知っているような気もするけどかっこいいなこれという感じです。
よくわからないのは超未来なのにプロジェクターで映像を投影したりしているところ。映像自体はかっこいいけえれど、「え、なにこの小さい箱、プロジェクター?」みたいな細部のダサさはあります。

リンチ版はこのようなCG技術がない時代によくぞ作り上げたなと思えるセットや動きが沢山あります。ハルコネン男爵が空中に浮くシーンも不快さとキモさに溢れていて傑作だと思うのです。テクスチャーもいいし。

シャロメ版はミニマル?

世界観という意味ではドゥニ監督の新版は全体的にミニマル的です。黒と灰色とベージュだけの世界。キリッとした白と黒だけのコムデギャルソンな世界。それは建物や画面構成だけでなく、衣装、音楽にも表れています。音は徹底して低音を響かせ続け、時折高音で「アーーーーー」というありがちな人の声を響かせる。これが永遠繰り返される感じ。ちょっと一辺倒だなという印象は否めません。

監督は宮﨑駿ファン?

今回のDUNEはちょっと世界観が宮﨑アニメを感じさせます。まず、主人公たちが乗る飛行艇のような未来のヘリコプターがあるのですが、それがナウシカに出てきたトンボ系の虫に似ています。それだけなら昆虫だから似るかなと思いますが、砂の惑星の地下にある植物を育てているプラントがナウシカの表現にそっくりなんです。

ナウシカが綺麗な水で育てれば有毒な菌を発しないと説明する地下のミニ植物園に似た場面があるのです。そこでの光のシーンも、同じナウシカの劇中でアスベルとナウシカが腐海の砂に埋もれた後のシーン。砂だらけの空間に上から光が刺し彼らだけを照らす場面。そこに似ています。
いやもしかしたら、さらに逆で、宮﨑駿さんがフランク・ハーバートの原作に影響を受けてあのシーンを作ったのかもしれませんが。

視聴感想まとめ

全体の世界観やキャラクター、音楽についてはデヴィッド・リンチ版DUNEの方が独自性があり印象に残る。一方で、シャラメ版はミニマルに徹し、ひたすら無駄を省いたかっこいい作り。現代的、コンマリ的な潔さがあります。デビッド・リンチ版を知っている方であれば物足りなさを感じるかもしれません。
とはいえ世界でまずまずヒットしたシャロメ版はパート2が制作され2023年に公開予定です。ただし昨今の俳優組合ストライキにより2024年以降に遅らせるという噂もあるようです。
ともかく、この映画は映画館で見るに限りますのでDUNE/砂の惑星 パート2が公開されたら劇場へ走りましょう。その前にアマプラやU-NEXTでシャラメ版、デイビッド・リンチ版もチェックしてみてください。
最後に言っておくと、リンチ監督は映画一本であのラストシーンまで持って行けたのはすごいことだと思うんです。砂虫の迫力もとんでもないですしね。稀有で偉大な監督です。
もう一人ホドロフスキーという監督がかつてデューン制作に挑んだことがありましたがそちらは完全に失敗して、作品を撮るところまで辿り着けませんでした。この辺のところは以前ブログに書きましたからこちらからどうぞ→『ホドロフスキーが見せたかったDUNE』

シャロメ、ゼンデーヤ版AmazonPrime→DUNE/デューン 砂の惑星(字幕版)

デビッド・リンチ版AmazonPrime→デヴィッド・リンチ『デューン』 (字幕版)

U-NEXT』で探す。

 

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