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映画レビュー『TAR/ター』指揮者の狂気をケイト・ブランシェットが快演

天才音楽家のプレッシャーと仕事、現代の不条理と世情を描いた音楽映画『TAR/ター』

まず最初に一言。

いいです。音楽、いや音がいいです。音の作りと見せ方(聴かせ方)が素晴らしい。そこだけでも見る価値がある作品。クオリティが高い。私はMacBook Proにヘッドフォーンを繋いで見ましたけど、いや〜音作りが良かったです。これは映画館で見るべきでしたね。音響の良い場所で見ることをお勧めします。それに答える高度な完成度だと思います。他にも社会問題なども織り交ぜていて、映画全体としても得点の高い作品でした。

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『TAR/ター』のあらすじ

主人公は売れっ子の天才指揮者。ベルリンフィルを指揮する実力と人気を兼ね備えた現役バリバリの女性指揮者です。この女性指揮者というのがポイントで、交響楽団を指揮する女性というのは限りなく少ないのが実情だそう。

ケイト・ブランシェット演じる主人公ターはレズビアンで、同性のパートナーがいます。養子をもらったのか子供も育てている夫婦でもあります。ケイトはお父さんとして扱われ、妻であるもう一人の女性は彼女の交響楽団で第一バイオリンをこなす女性奏者です。

二人は成功し、指揮者として絶頂期を迎えている彼女は、とんでもない豪邸や事務所を持ち、何不自由ない生活を満喫しています。ちょうど自身の作曲を進めている最中ですが、交響楽団との録音コンサートも控えていて、緊張はどんどんピークを迎えていきます。

そんな中、レズビアンである彼女の元に若いチェロ奏者がやってきます。若いが故か、マエストロと呼ばれるケイト・ブランシェットにも臆することなく我が道をゆく溌剌とした彼女に、指揮者であるターは心を揺さぶられます。ところが、そのあたりから彼女の成功の歯車が崩れ始めるのです。どうなるマエストロ。
クラッシックの名曲をふんだんに使用し、実際のオーケストラが演奏したシーンや音が使われ劇中で流れる音楽も最高です。

 

ここが見どころ:その1

『TAR/ター』の物語としての見どころは単に音楽の天才を描いただけでなく、現代の2020年代を生きる社会の問題を扱っているところでしょう。例えば、大成功している主人公は著名な大学でも教鞭をとるのですが、そこにSNSやLGBTQやキャンセルカルチャーといった現代の諸問題がうまく組み合わされます。大学のシーンも一見何気ないですが、大切な見どころです。

ここが見どころ:その2

音楽が素晴らしいとは最初に述べましたが、演奏されるクラッシック以外の音も素晴らしいのがこの映画のレベルが高い点。しかも、音を作っているのが『ジョーカー』『レベナント:蘇りし者』、TVドラマ『チェルノブイリ』などの作曲や音作りを担当したヒドゥル・グドナドッティルさんなんです。
彼女は元々映画音楽の先輩であるヨハン・ヨハンソンのところで一緒に映画音楽制作に携わっていた人です。ちなみに、ヨハンさんは自身で監督した映画もあり、これがアマプラで視聴できます。(2023年12月現在)レビューは低めの評価ですが、戦争の遺跡を詩的に独自の目線で切り取った意欲的で実験的な作風は結構好みが分かれるかもですが、バズメン的には評価大です。そしてもちろん音がとんでもなくかっこいいです。アフィですがアマプラへのリンク貼っておきます→ヨハン・ヨハンソン『最後にして最初の人類』
ヨハン・ヨハンソンは若くして逝去されましたが、ヒドゥル・グドナドッティルとの楽曲も残されており必聴です。未視聴の方は是非サンプルだけでも聴いてみてください。『without sinking』というアルバムの静かで暗いチェロの響き、最高です↓

さて、映画『TAR/ター』の音楽に話を戻します。自身がチェリストでもある彼女ヒドゥル・グドナドッティルが細部に注意を凝らして作り上げた音は、本当に素晴らしかったです。普通は映画がある程度できてから音作りを始めることが多い業界らしいですが、グドナドッティルさんは撮影前からチームに入り監督と沢山話し合いながら制作を進めたようでした。

緊張感が高まることをケイト・ブランシェットをはじめとした俳優陣が支えていますが、その演技に音が呼応しながら醸し出される雰囲気が素晴らしく上質な緊張を表現しています。サイコ映画とまで言われていますが、極度に悲惨なシーンなどは一切ありません。心理と音によって高まる緊張、状況の変化をここまで上質に成し遂げたのは製作陣に拍手ですね。

部屋の片隅でスマホが小さく鳴る場面や冷蔵庫の振動、そういった細部にまで気を抜かぬ音。主人公と同じく音への執着を見せた製作陣。映画と主人公が合体した映画でした。

 

ここが見どころ:その3

内装のあつらえが素晴らしい。ターというある種狂気に満ちた音楽家が暮らす豪華な家や執務室。上流階級のこれでもかという品のある調度品や内装のエレガントさ。そして洗練されたセンスの良さが彼女を表しています。人間味を感じさせないほどの冷気に近い冷たい部屋。そして売れる前の部屋のギャップ。うまいねぇ。作りが上手だねぇと思うシーンです。

トータルとしての感想

ストーリーも脚本もおかしなところがなく、絶妙に練られ設定されています。それに上質な音楽と、背景となる内装や風景、ビル、ホールの美しさ。これはまさに映画という交響楽団を作り上げた作品ではないでしょうか。そしてラストの展開とそこからさまざまな方向に読み取ることのできる終焉。見どころ満載の映画でした。

ぜひ、ご覧ください。損はありません。上映後に問題的に見られた部分があったのもこの映画らしいところです。映画のDVDとアマゾンプライム版では字幕も異なるようでそこも興味深い。気になる方は比べてみてください。

2023年12月現在アマゾンプライムで視聴が可能です。こちらからチェックしてください>>TAR/ター(字幕版) Amazon Prime video

 

 
追記:この記事を書いた後に出会ったYouTube上の映画解説がとんでもなく視野が広く、深かったので感銘を受けました。バズメンでは解釈の追いつかなかった『時間』の概念まで提示していて唸る一方の解説動画。本編映画を視聴後は是非こちらご覧ください。シネマリンさんというYouTubeチャンネルです。なぜ登録者が4500人なのか分からないレベル。数万はいて良いはずのクオリティです。『TAR/ター』についてはプラスで町山さんの解説動画見ればほぼこの映画は理解できると思います。

映画って本当に全部入りですね。ではまた〜

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