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【映画レビュー】バリーコーガンの青春映画?実は恐ろしくも美しい酷悪サスペンス『Saltburn』

酷悪な描写と映像美を両立させた『ソルトバーン』英国貴族館のサスペンス

内容を抜きに、まず最初の十五分の映像美と色味。貴族の館と調度品の美しさでハマる人には一気のささる映画です。
主演はバリーコーガン(Barry Keogan)とジェイコブエロルディで、一見二人を中心とした青春映画のように見えます。現代によくあるセクシャリティの自由とその苦しみなどを軸にした青年二人の爽やか映画。しかし、何か違和感を感じます。
(途中まではネタバレしませんが、あらすじの項目以降ではネタバレします。その前に「ネタバレ注意」の警告表示します)

青春映画に思える理由には例えば音楽があります。所々に流れる音楽は英国の若者が踊り狂うロックがかかります。しかし、なにか映像表現とのマッチングに微妙なズレというか、感覚的な違和感を持たせた作りになっています。「いいんだけど、なんかちょっと変な気がする」という雰囲気で、なかなか上手い演出だと思います。
製作陣にマーゴットロビー(バービーの女優さん)が名を連ねていることに注目です。ちなみに、バリー・コーガンは英語の発音により近いバリー・キオガンとも表記されることがあるようです。そして、より発音に正確なのは”母国アイルランドの姓としては「キョアン」のほうがより正確な発音に近い”(出典Wikipedia)とのこと。

では、話の筋を書いておきましょう。

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映画『ソルトバーン』のあらすじ

超貴族で見た目も晴れやかな青年と田舎臭い同級生の男子が主人公です。バリー・コーガン演じる田舎者の男子は、格好もダサく、みんなから疎まれる存在ですが、ひょんなことから貴族青年と仲良くなります。だんだん進行を深め、彼らは行動を共にするように発展します。そして夏休みには貴族青年の両親が暮らす館へ招待されます。
それがイギリスにあるソルトバーンという町の大屋敷なのです。(サルトバーンと書くこともあるみたい)ただし、そこにはクセのある貴族社会があり、田舎者男子はとまどいながらも共に生活を始めます。しかし、様々な誘惑や事件がおこり、二人の男子はおどろおどろしい貴族館をとりまく渦に飲み込まれていくのです。

この先大幅にネタバレします!!未視聴の方はご注意ください。

 

この映画『Saltburn』の酷悪なところと美しいところ

言って終えば、『Saltburn』の見どころは「酷悪」グロテスクと、「美しさ」の二点だと思います。
美しさの点は、随所にみられる鮮やかな色使いと、建物や庭園の幽玄な魅力に詰まっています。それは冒頭の十分に充分詰まっていて、本当によくできているので一気に掴まれてしまいます。単に学校や貴族の館を歩いていく単純なシーンの連続なのですが、構図もいい、動きもいい、カメラアングルもいい、「なんだこれ見たい」と思わせる丁寧で興味深い仕上がりなのです。
とくにアンティークや古い建物等に興味のある人にはグッとくる出だしです。

そして、「醜さ」「酷悪」「グロテスク」な表現がこの映画のもう一つの面です。

 

映画『ソルトバーン』の「醜さ」「酷悪」「グロテスク」な表現について

もうここは完全にネタバレしてしまうので、了承の上読んでください。

貴族の館で殺人事件や男女の誘惑が起こるのですが、そこの描写が酷くグロテスクです。そこまで見せるか?というほど「うぇ〜」という気持ち悪さがあります。しかもそのグロテスクさというのが、内臓が飛び出るとかそういった見た目的なグロテスク表現ではないのです。人間の生々しい性の部分を堂々と見せる酷悪です。
主人公が「そこまでキモいことすんなよ」ということを画面でみせるキモさです。別に犯罪でもないことだし、誰でもやろうと思えばやれるかもしれない、しかしほとんどの人は想像さえしない極度な行為。
人を偏愛するあまり起こす異常行動。誰かを操ろうとするときに見せる酷悪が、隠されることなく画面に表示されます。まぁ、当然18禁です。ただ、そのあたりをやり切った感はあるので、良し悪しは別としても潔いというか、製作者の意思は伝わる作品にはなっているかと思います。

 

バリー・コーガンという稀有な役者

この映画の肝は「出だしの青春感を装った違和感の演出と美しい映像美」そして、後半の「酷悪な性の愛情表現」です。
そして、それを見事に演じた主人公バリーコーガン、この人の演技のうまさ、配役の妙につきます。そのための映画です。コーガンの演技をみるためだけに見てもいいレベルの映画です。飛び抜けています。顔に狂気がつまっていますが、それを隠したりうっすら醸し出したり、肉体の太さやその顔とのアンバランスさ全てで主人公を表します。とんでもない役者です。抜擢した製作陣もすごい。

 

バリーコーガンは『オッペンハイマー』で話題のクリストファーノーラン監督の作品『ダンケルク』で父親とともに英国の港から小船で救出隊に加わる青年の役を演じています。その時もキリアンマーフィーと二人で絶妙な演技をみせていました。英国、スコットランド、アイルランド方面ではトップの名優コンビですね。単純に綺麗なだけではない忘れられない顔立ちです。(『オッペンハイマー』の感想はこちらに書きました)

話は脱線しますが、クリストファーノーラン監督の長編デビュー作がオッペンハイマーのヒットに合わせてAmazonプライムで急に公開されました。(2024年6月6日時点)
今ではなかなか見るチャンスの少ない映画だと思うので、配信が終わる前にこの機会にぜひご覧ください→『フォロウィング(HDレストア版)

 

さて、『ソルトバーン』にもどります。

この映画『ソルトバーン』をどう受け止めるかは個人差が多々ある映画だと思います。

たしかに美しいシーンがあるけれど、脚本の精細さでいうともうひとつ詰めがあっても良かったかもしれません。殺人にしても、その後の警察の操作だとか、現実的ではないことがところどころあります。
そして、肝でもある「酷悪な表現」ここに嫌悪感を感じる人も多数いらっしゃるかもしれません。大ヒットはしないだろうなという見せ方でした。しかし、逆によくぞここまで潔く、という意見もあるかもしれません。

私的には、一度は見たら良いと思います。深夜の布団上で見ましたが寝ませんでした。深夜でも全然眠くならずに最後まで見れてしまう映画のクオリティはあります。映像の色味は大好きな部分がいくつもありました。なので見れてよかったという感想です。ただ、また定期的に見るかと言ったらそこまでのストーリーや映画的哲学ではないかなといった感想です。

総合的には、「単純な青春映画をみるよりも何倍も面白く、潔い意志のある刺激的な映画」であることは確かです。そしてなんといってもバリーコーガン(キオガン,キョアン)の演技の秀逸さ、そこだけでも見る価値は充分にある映画です。

ご視聴はこちらアマゾンプライムからどうぞ→『Saltburn

みなさんはどう感じましたか?ではまた次の映画で会いましょう。

 

 

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