HDRとは?HLGとは何なのか?S-LOGとの違い色測定とは?
HDRで撮影始めたけど、HDRってそもそも何よ?
バズメンくんが気になった撮影・映像関係のトレンド的なワード『HDR』とは一体何なのか、調べてみました。全然理解が及ばないところだらけですが、現状で何となくバズメンくんが「こういうことじゃないかな?」と勉強し始めたことを書いて行きます。
まず、言葉の整理から。
HDRとはハイ・ダイナミック・レンジの略称
HLGとはハイブリッド・ログ・ガンマの略称
PQとはパーセプチュアル・クアンタイズの略称
要約すると・・「HDR」という広域な色情報等を持つ方式で撮影収録する→それには大きく二つの規格がある「HLG」もしくは「PQ」→前者は放送向き、後者は映画等→視聴者が見る。
それぞれの成り立ちと意味
HDR→従来のSDR(スタンダード・ダイナミック・レンジ)つまり、これまで標準だった映像の幅よりも、ハイレベル(情報が多く収録できる)なレンジ(幅)で映像を記録・再生する規格
で、その方法として以下の二種類が対応して開発が進んでいる。それがHLGとPQ方式
HLGとPQ方式とは
HLGは、日本の放送機関であるNHKとイギリスの放送協会BBCが共同で開発した方式。
一方でPQ方式はアメリカのドルビー(良く映画館で聞くあのドルビー)が注力する方式で、ポストプロダクションでの色調整を念頭においたもの。こちらの規格の方が先行して開発が進んでいた。
この二つの方式は何が違うのか?(HLGとPQ方式の違い)
HLG→生放送等の撮って出しに向いていて、編集プロダクションを通さなくてもそれなりに美しい映像(カラー調整を施さなくても)を提供できる。つまりニュースや中継の多いNHK・BBC向き。
PQ方式→編集プロダクション、ポスプロでのカラーグレーディング等を念頭に置いているので、劇場上映やブルーレイ、配信などに向いている。どこへ出すかによってグレーディングを細かく調整できるから(?)ドルビーの主力である映画や映画から派生する配信やディスク販売等に優位。
違いはなんとなく分かった。ではこの二つが撮影時のHDRとどう関係してくるのか。もう少し詳しくみてみる。
一般利用者とHDRの関係性
*一般の映像制作者がHDR編集環境を整えることができるかどうか、別の記事にまとめました。HDR撮影・編集って関係してくるかな?と思っている映像好きの方はこちらもご覧ください。
『HDRでの撮影と編集とは何か?映像制作者が知っておくこと。個人でHDR編集環境は可能か?』
「レンジの広いハイダイナミックレンジ(HDR)の二種類の規格(HLGやPQ)で出力するということ」
二つの方式ともHDR対応の開発が進んでいる。HDRは広い明かりの範囲を持ち、色域も広い。SDRよりも白の限界点と黒つぶれと言われる黒の限界点までの範囲が広く、これまでであればどちらかに合わせれば逆サイド(白に合わせれば黒が潰れ、黒に合わせると白が飛んでしまう)が消えてしまう情報も同時に収録できる。
民生機としても一般の映像制作者むけにHDRに対応したモニターやDCI-P3対応モニターなどが2020年には売り出されている。ちなみに最近話題のBENQ製品が色再現度の高いモニターを低価格で販売スタート『BENQ 32型プロ向けモニター SW321C』
しかも、このBENQさんのsw321cはモニターを90度回転させて縦型表示ができるのでスマホ向けコンテンツなどにも強力らしい。
(他にもテレビ、アップルモニター等でHDR対応製品があるらしい・・)
以上のように既に一般への普及活動が始まっている感じはある。フルミラーレスのハイエンドカメラではHDRに対応した収録方式が搭載されている。このカメラで収録された映像がHDR対応のモニターで映されると美しく正しい色で表示される。(撮影時との齟齬なく)
*ちなみにバズメンくんが2020年から使い始めたSony α7iiiもHDR収録が可能。カメラ設定からピクチャープロファイル(pp10)を選択する。
しかし、まだ大多数の一般家庭にはHDRモニターは普及していないのでHDR(HLG/PQ方式)で制作された映像をそのままでは正確に見ることができないシチュエーションが多い。そこで、登場するのがLUT(ダビンチリゾルブ等の編集アプリで聞くあのLUT)ルック・アップ・テーブル。
このLUTの中からRec709というLUTを選び編集した動画素材に当ててあげると、従来のモニター等でもその映像をある程度美しく表示できる。(Rec.709と言う企画の範囲内で)
ソニーの独自規格『s-log』
ちなみにsony独自のLOG撮影の一種であるS-LogのS-Gamut3はHDRに向いているという。(*出典https://www.pronews.jp/column/20171018110074157.html)
こちらによれば、S-Log3で記録する際にその映像をモニターで見て、「暗いな」と思ってアイリスを開け目(カメラの設定を明るくする)にするのはお勧めしないそうです。カメラ本体に内蔵されたガンマ表示機能で従来の規格である709用のLUTを当ててみて下さいとのこと。その方が幅の広いレンジで収録できるそうです。
例:sony a7iiiの機種ならHDRの設定で撮影中でもモニターの表示を709LUTを当てた後の色で表示させる機能がある。(メニューの中のモニターからガンマサポートだったかな?後日正式名称チェックします。)
この話を踏まえると、巷で聞く「LOG撮影時はアイリスを上げて明るめに撮影する」というのは間違いなのだろうか?それともバズメンくんが双方の内容自体を誤解しているのだろうか?
ざっとまとめると・・
HDRのPQ方式とHLGとは
白〜黒等のレンジが広いHDRで撮影(LOGで撮影することに近い、あるいは同義に近い?)→幅広く収録したガンマを編集で調整することで目的の美しさを追求する→視聴者が対応した映画館やモニターでそれを見る。ただし、未対応のモニターが多いので、従来のRec.709という方式に落とし込んだ映像を放映することもある。生放送やニュースなどが一例。
なので(?)、NHK/BBCはHLGを推す。
一方で、Dolbyに代表される映画館クオリティ、そしてNetflix、YouTube等の配信業者は光や影、色味調整を同一のガンマで行った後に上映するDolby-PQ方式を選択、力を入れている。と言うのも一回きりの放送と違い媒体を変更しても調整が可能な点が有益だから。
今後の展開予想
フルミラーレス等のハイエンド寄りな民生機もHDR撮影の設定が可能になってきていて、それは今後加速していくだろうということ。映像収録は8bit (sony a7iii)から10bit(sony a7siii)へと深度を増していく。
ところが、撮影機材をα7s3mに変えただけではダメな部分がある。それはモニター。モニターが8bitのままでは10bit対応の高級カメラで撮影した色を正確に再現はできない。プロの場合は納品先が10bitで自分が8bitのモニターを利用して編集していた場合、色の齟齬が生じる可能性がありリスクとなる。小さな個人映像制作者でも顧客の対象によっては前出のBENQさんモニターやEIZO社さんの10bit対応モニターを利用する選択が必要な時代となってきた。
EIZO社さん10bit対応モニター参考価格はこちらの楽天リンクでチェックできます→EIZO 27.0型カラーマネジメント液晶モニター CS2731-BK
一方で、映像のクオリティーに注力していないクライアントはチェックする機材を考えていないこともあるらしい。すると「事務所にあるMacBookで、」となりHDRや10bitの意味が薄れる。むしろMacBook Airで綺麗に見えるのが正解という捻れた現象が起こりうる。
HDRについての曖昧な結論
「とりあえず、HDRの撮影に慣れていった方が良さそうだ」というのが現時点での結論。かなり曖昧ではあるけどHDRが基本になって来ているわけだから・・・しかし、映像に目を向けていない人々がその点を重要視していないことも頭の隅に入れておく必要がある。でないと、マイクロソフトのサーフェス画面が正解になったりMacBookの画面が正解になったり、DVDを会議用プロジェクターで写した色味が正解になったりするという恐ろしい現実と対面することになる。
*2020年11月にアップデートされた編集ソフトのDaVinci Resolve17はHDR版のカラーホイールが標準搭載されました。
一昔前は「4kなんて一般人は誰も必要ないじゃんテレビ映画業界の話でしょ」と言われていたのが現在では嘘のように手持ちのカメラが4kを当たり前に記録していく。HDRが基本という世界、それはLOG撮影が普通に可能になった今、既に(とっくに)始まっているのかもしれない。
色々調べてみましたが、ちょっとバズメンくんが全てを正確に理解するには現時点では許容量オーバーな深い深い技術内容でした・・。まあ知らないよりは少しでも知った方が良いだろうということで、勉強中です。間違いや誤解もあると思いますが、「HDRって何だろ?」と思っていたどなたかに少しでも役立てば嬉しい。
色測定については長くなったので今回は触れられませんでしたので簡単に概要だけ・・
<色測定とは>
映画館ではスクリーンを計測し、pc等ではモニターを計測。多数ある規格の基準値の範囲に色が収まっているか確認し、調整する作業。映画の場合は真っ白と呼ばれる白より少し黄色味がかかった白が白としての基準になると聞いたことがあります。測定しないと、スクリーンやモニターごとに色味が異なって再生され、映像制作者の意図とは異なってしまう可能性がある。前述のBenqQモニターとマックブック では色が異なる現象と同じで、映画館や編集プロダクション等でもモニターやスクリーン上の色や明るさ等の基準を合わせる作業が必要となり色測定を行う。これをpcで行う場合モニターのキャリブレーションという。
撮る側の意図をより正しく再現しようとする行為、そのことが色測定の意味する所のようです。色はかなり奥深い話ですね。沼が広がる一方です・・
参考文献及び一部出典
『pronews.jp』非常に分かりやすくsonyの担当者さんがS-logやHDRについて解説されている。
・https://www.pronews.jp/column/20171018110074157.html
『J-STAGE』
2015年のIBCレポートでHDRの深い部分を紹介・説明してくださっている。
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/70/1/70_123/_article/-char/ja/
バズメンくんが使用しているHDRモードでの撮影が可能なカメラ『SONY a7iii』についての記事はこちらです→http://bazmen.com/sony-a7iii/
*2024/08追記 バズメンくんは現在主にSONY cinema line FX30を使用していますが、こちらもHLG(HDR)で撮影可能です。そして、a7iiiと比べた場合、10bitの色味の深さがあり、タリーランプも搭載されより動画に特化した機種となっています。円高ですこしずつお値段が上がっています。このままでは30万越えになってしまう日がくるのでしょうか?
購入検討中の方、動画メインならFX30かなりおすすめです!↓
コメントを残す